(有)有美
ドライTシャツ用 インクジェットプリント開発から実用化までの経緯
堅ろう度試験結果報告
従来のポリエステル生地に施す顔料プリント技術では、プリントされた箇所の通気性が失われ、
通気性を必要とするスポーツなどのユニホームなどには適していませんでした。
従来、これらスポーツ用ユニホームなどへの染色は、白のポリエステル生地を染色する昇華プリント技術が使用され、濃色ドライテイシャツへのプリントは不可能でした。有美ではTシャツなどの濃色ポリエステルを主とする機能性繊維製品に対してプリントでき、さらに糸に直接染色することで通気性を確保する方法を本研究で開発しました。
群馬県繊維工業試験場にて堅ろう度試験を行い堅牢試験工程 試験機器 試験経緯を示したものです。
実験方法
①耐光試験(紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法 JIS L 0842)
有美からの提供生地 のプリント部分(図1)を6.5×4㎝の切片を作成し、耐光試験機(図2)で処理を行った。
通常、服地における試験は3級相当以上(紫外線照射時間4時間程度)が期待されるが、今回のプリント技術では耐光性が高い技術であるとのことで、4級(紫外線照射時間16時間相当)の試験を行った。
有美で試作した生地
耐光試験機
② 洗濯試験(洗濯に対する染色堅ろう度試験方法 JIS L 0844)
洗濯試験は、提供生地のプリント部分を10×4㎝に調整し、ポリエステル白布、綿白布(いずれも、日本規格協会より購入)を5×4㎝にして、上記生地のプリント部分に接触するようにして挟み込んだ。この試験試料を、50℃にしたマルセルせっけん液(1%)100mLに入れて、50℃、30分間洗濯処理を行った。洗濯試験機を写真3に示す。
洗濯処理後、試験試料を取り出し、水道水100mLで1分間すすぎを行い、これを2回繰り返した。
その後、余分な水分を清浄な綿タオルでとり、50℃で乾燥した。
洗濯試験機
③汗試験(汗に対する染色堅ろう度試験方法 JIS L 0848)
汗試験は、洗濯試験同様に生地を調整し、10×4㎝のポリエステル白布、綿白布でサンドイッチ状に挟み込んだ。その際、各白布がプリント部分に接触するように工夫した。
試験試料は2枚作成し、酸性人工汗液、アルカリ性人工汗液にそれぞれ30分間浸漬した。その後、汗試験機(写真4)に装着し、37℃で4時間処理を行った。
処理後、汗試験機から取り出し、50℃で乾燥した。
汗試験機
④摩擦試験(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法 JIS L 0849)
提供生地のプリント部分を含むように22×3cmにタテ方向およびヨコ方向に各2枚ずつ試料を調整した。調整した生地を摩擦試験機(写真5)に設置し、乾燥した綿布と蒸留水に浸漬し、余計な水分を除去した綿布でそれぞれ摩擦した。摩擦回数は、往復100回とした。
摩擦試験機
② ドライクリーニング試験(ドライクリーニングに対する染色堅ろう度試験方法JIS L 0860)
提供試料を②の洗濯試験同様の大きさに調整した。本試験では、多繊交織布(日本規格協会より購入)を試験試料に重ねて、周囲を綿糸で縫い付けた。その試験試料を100mLの工業用ガソリン5号の中に浸漬し、ドライクリーニング試験機(写真6)で処理を行った。処理条件は、30℃、30分である。処理後、試験試料を取り出し、ドラフトチャンバー内で一晩室温にて乾燥させた。
ドライクリーニング試験機
実験結果および考察
濃色用 150℃ 20秒 2回 |
150℃ 20秒 後処理 20秒 2回 |
150℃ 30秒 後処理 30秒 |
|||
耐光 | 4級 | 以上 | 以上 | 以上 | |
洗濯 | 汚染(ポリエステル) 汚染(綿) |
4-5 4-5 4-5 |
4-5 4-5 4-5 |
4-5 4-5 4-5 |
|
汗 | 酸性 | 変退色 汚染(ポリエステル) 汚染(綿) |
4-5 4-5 4-5 |
4-5 4-5 4-5 |
4-5 4-5 4-5 |
アルカリ性 | 変退色 汚染(ポリエステル) 汚染(綿) |
4-5 4-5 4-5 |
4-5 4-5 4-5 |
4-5 4-5 4-5 |
|
摩擦 | 乾燥 | タテ ヨコ |
1-2 3 2-3 1 |
1-2 2 2-3 2-3 |
2 3-4 2-3 2-3 |
アルカリ性 | 変退色 汚染(ポリエステル) 汚染(綿) |
||||
ドライ クリーニング |
変退色 汚染 |
4-5 4-5(全般) |
4-5 4-5(全般) |
4-5 4-5(全般) |
表から明らかなように、本研究で行った試作生地は摩擦試験以外では問題は認められない。
汗試験のアルカリ汗液処理後の生地は少し写真7のように少し白く汚染したが、水により簡単に落ちることが分かった。
これは、有美の企業秘密で明らかにされていないが、プリント時の処理剤がアルカリで反応したために起こった現象であると推察された。そのため、一度洗濯処理した生地を用いることでこの汚染は問題にならないと考える。
しかし、摩擦試験ではプリント生地を摩擦した綿布に汚染が認められた。有美のプリント条件(表の一番右の条件)では改善が認められており、150℃の処理時間と後処理の時間を長くすることで改善できる可能性がある。
汗液で処理した試作品
(上:酸性 下:アルカリ性)